昨年10月2日~6日に大気中からのCO2回収及び固定・利用に関する社会実装モデル等に関する調査を目的として、Climeworks社(アイスランド)、Airhive社(イギリス)を訪問しました。また、イギリスCO2RE Director であるDr.Smithと面談しお話を伺いました。
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スイスに本社を持つアミン吸収法によるDAC技術を保有する企業である。本現地調査では、商業プラントが設置されているアイスランドのMammoth工場を訪問。 | |
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Mammothプラントの空気吸入側の様子。大気からCO2回収する DAC装置はコレクターコンテナと呼ばれるモジュールで構成。1モジュールは船輸送のコンテナサイズ。Mammothプラントは3台のモジュールで構成され、各モジュールは6つの部屋に分かれている。 |
Mammothプラントの空気排出側の様子。各部屋にはハニカム構造のアミン系の固体フィルターがある。吸収+脱離の1サイクルを2時間で運転。脱離は1部屋ずつ行われ、他の5部屋はその間にCO2を吸収しているため吸収100分、脱離20分と想定される。 |
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地熱発電所(青)と貯蔵設備(赤)の様子。固定フィルター(回収容器)に蒸気を供給し、熱を加えることで、CO2を回収。蒸気や電気は、隣接する地熱発電所より供給される。また、ストレージパートナーとしてCarbFixと提携しており、敷地内には2つのCO2貯蔵用の井戸がある。 |
コストは、従来はCO2回収に1トン約1,000USD程度。技術開発によりコスト削減を進めている状況。稼働中のボストンの試験場では約50%削減(400~600トン/ドル→250~350トン/ドルまで削減できると期待) |
英国に本社を持つ炭酸塩化によるDAC技術を保有するスタートアップ企業。本現地調査では、同社のラボとオフィスを訪問。
流動床技術を利用したDAC設備で、炭素を吸着する鉱物を含んだパウダーを混ぜた流動媒体を製造し、これらの粒子を流動化し、水平にした反応器内でCO2分子と接触させることで、CO2を効率的に吸着させる技術を利用。設備投資は CO2を1トン当たり130ドル程度。今後は60%程度ダウンし55~60ドルになる可能性。
本技術は他のネガティブエミッション技術と異なり、回収したCO2を別用途に利用できるのが利点。現在ヨーロッパで流通しているCO2価格よりも安くCO2を提供できると考えている。西ヨーロッパのコカ・コーラでは、年間20万トンのCO2を使用。また、北米では食品・飲料の70%を占めるCO2の産業ガス市場は20メガトン。20メガトンを脱炭素化できれば、400億ドルの市場にもなり、大きなビジネスチャンスとなりうる。
最初の商業プラントは年間10,000トンのモジュールを計画している。AirhiveのDACシステムは、1000トン除去できるシステムで考えると、コスト、設備製造、エネルギー要件の観点から市場で最高のDACシステムになると考えている。
CO2REはネガティブエミッション技術の実証および普及に向けたプロジェクトで、オックスフォード大学Dr. Steve Smithが本プロジェクトのエグゼクティブディレクターを務める。本現地調査では、Dr. Steve Smithのオフィスを訪問。
Greenhouse gas removal / GGRについて研究している、COREまたはCO2REと呼ばれるプロジェクトである。英国の研究評議会によって資金提供されている学際的なプロジェクト。主な研究分野は以下の3つ。
・環境規制や環境政策について調査を実施。
・エネルギーシステムモデル、土地セクターモデル、政府や他の企業が英国で気候目標を達成するために実際に使用するモデルの種類にどのように反映させるかを検討。
・様々なテクノロジーをどのように監視および測定するか、および環境目標とどのように適合するかを検討
英国ネットゼロ戦略における要素と現状とのギャップ表。政策に関する大きな話題は、炭素差金決済取引と呼ばれるものを通じてBECCSやDACCSを支援すること、つまり基本的にCO2の1トン当たりの支払いを保証することで、並行して、これらを英国の排出量取引制度に含めることも検討中。英国には排出量取引制度があり、政府はその排出量取引制度にECCSやDACCSを含めることについて協議、議論している。